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011宝石の色、指輪の歴史から学ぶ、ラグジュアリーな世界

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「十人十色」という言葉は、考え、好み、性質などが、人によってそれぞれに異なることをあらわします。1970年代までは「十人一色」、オイルショック後から1980年代までは「十人十色」、現在は「一人十色」の時代になったと言われます。

このように、消費者が求めるものは多様化し、方向性をとらえにくくなっているとはいえ、万人向けの商品やサービスを提供しようとすると、コンセプトが曖昧になり、結果的に誰も買わない魅力のないものになってしまいがち、という状況に変わりはありません。さまざまな切り口で消費者を細分化し、感度の良いセグメントを発見することが大切です。

「ラグジュアリー」は、消費者を刺激する切り口のひとつ。今回は、国立西洋美術館で、開催中の「橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き」から、古今東西の人々を魅力した宝石の色と輝き、装飾美術としてのジュエリーのスタイル(様式)の変遷、そして生活文化との関係を見ていきましょう。


宝石の色と輝き

2012年に国立西洋美術館に寄贈された「橋本コレクション」は、「松方コレクション」以来のまとまった収集品と言われます。橋本貫志氏は1924年東京生まれ。東京美術学校(現東京藝術大学)油絵科を卒業。古美術鑑賞家、元実業家で、日本、東洋、ヨーロッパの古美術品を蒐集するコレクターとして知られています。これまでにも、コレクションを東京国立博物館、東京藝術大学などに寄贈しています。

橋本氏が収集した760点あまりの指輪は、年代や素材に偏りがなく、極めて広範な内容を持っています。本展では約300点の指輪が一挙に公開されます。

01.jpg《スカラベ》 紀元前1991-1650年頃 アメシスト、金
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

最も古い指輪のひとつは、4000年前の古代エジプトにさかのぼります。当時の指輪は、宝飾品ではなく身の安全を祈願する護符として、あるいは、実用的な印章として用いられました。このフンコロガシの形をしたスカラベの指輪は、飾りではなくお守りとして用いられました。

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03.jpg《ギメル・リング》17世紀 ルビー、ダイヤモンド、金
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

指輪は、婚礼や死のような人生の大きな節目においても、象徴的な役割を果たしました。16世紀から17世紀の中世ヨーロッパで、マリッジリング(結婚指輪)として用いられるようになったギメル・リングの「Gimmel」は、「双子」という意味のラテン語に由来します。

このギメル・リングは、ハート形のベゼルを、フープの両端に表されたふたつの右手が支えています。2つに割れたハートの断面には、骸骨が表されています。この指輪がつくられた17世紀は、メメント・モリ(死を思い出せ)の思想が広まりました。思想がデザインに与えた影響を示す事例です。

指輪の中の物語

04.jpg《女神ニケ》 紀元前4世紀後期 ガラス、金
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

金のフープに大きな回転式のベゼルがついたギリシャ古典期の指輪。ベゼルには深みのある青を背景に、黄金色の勝利の女神ニケがはばたいています。古代ギリシャでは、スポーツに限らず、演劇や音楽でも人々が競い合っていました。女神ニケは、古代ギリシャの人々の精神を象徴しています。

時代が進むと聖書も指輪のモチーフとなり、さらに18世紀になると、国王や画家などが実在の人物を描いたミニアチュール(細密画)をはめ込んだ指輪も見られるようになります。

05.jpg《アントン・ラファエル・メングスのミニアチュール》1775年頃 ミニアチュール、ガラス、金
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

この指輪のミニアチュールは、18世紀のドイツ人画家アントン・ラファエル・メングスの自画像。メングスは、バチカンの絵画学校の校長やスペインのカルロス3世の宮廷画家などを歴任した、新古典主義の先駆者でした。この指輪のベゼルの裏側には、持ち主として4人の名前が刻まれてます。そのひとりは、19世紀半ば、ラファエル前派を結成した画家のひとり、ウィリアム・ホルマン・ハント。人から人へと受け継がれた指輪の中には、芸術や文化の歴史を物語るものもあります。

指輪とファッションのスタイルの変遷

近代ヨーロッパで装飾美術運動が盛んになると、指輪のデザインにも時代を象徴するスタイル(様式)が見られるようになります。今回の展覧会では、神戸ファッション美術館が所蔵する18世紀から20世紀前半の衣装をマネキンに着せて展示し、マリー・アントワネットに代表されるロココ時代の宮廷ファッションから、ココ・シャネルに代表される20世期前半のモードへの衣服と指輪のスタイルの変遷を一覧できるようになっています。

ロココから新古典様式

06.jpg《ダイヤとエメラルドの花》 18世紀後期 ダイヤモンド、エメラルド、金、銀
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

18世紀、フランスの宮廷を中心に流行したロココは、曲線を多用した造形と華やかな色彩に特徴があります。新古典主義が台頭すると、エンパイアスタイルのファッションが流行し、指輪のデザインもシンメトリーを強調したボリュームのあるものが流布します。

アーツ&クラフト運動とアール・ヌーヴォー

07.jpgジョージ・ハント《アメシストと二羽の鳥》1920年頃 アメシスト、ペリドット、エナメル、銀
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスではアーツ&クラフト運動が興り、ヨーロッパでは、アール・ヌーヴォーが流行しました。ウィリアム・モリスらが推進したアーツ&クラフト運動は、大量生産を可能にした産業革命に対抗し、中世の手工芸の技を制作のよりどころとしました。

08.jpgルネ・ラリック《葉のプリカジュール》 1900年頃 真珠、ダイヤモンド、エナメル、金
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

アール・ヌーヴォーは、植物文様を多用した曲線豊かな装飾性が特徴で、同時代の衣服もS字曲線を描いたシルエットが流行しました。


アール・デコから現代へ

09.jpg《ミルグレイン・リング》1920年頃ダイヤモンド、プラチナ
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

1925年のパリの国際博覧会で開花したアール・デコは、アール・ヌーヴォーとは対照的に、幾何学をモチーフにした直線的な装飾が特徴です。コルセットを用いない機能的なファッションが登場したのもこの頃です。

10.jpg《ランバート・ブロスのカクテル・リング》 1950年頃 ダイヤモンド、ルビー、プラチナ
国立西洋美術館 橋本コレクション Photo:上野則宏

そして、現代の指輪は、ブリリアントカットに代表される輝きが特徴で、過去のモチーフや様式をふまえ、時間と用途の枠組みを超えるような作品を生み出しています。

身につける人によって表情を変える指輪

本展では、指輪を身に着けた女性を描いた絵画や版画も展示されています。

11.jpgピエール=オーギュスト・ルノワール 《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》 1872年 油彩、カンヴァス
国立西洋美術館 松方コレクション

ルノワールは、アルジェリア風の衣服をまとったパリの女性たちを描き、ロセッティは真紅のローブに身を包んだ恋人を描いています。画家がモデルの女性に向けるまなざしの違いが、指輪の描き方に表れているのではないでしょうか。

12.jpgダンテ・ガブリエル・ロセッティ 《愛の杯》 1867年 油彩、板
国立西洋美術館

このように、「ラグジュアリー」は、どの時代にも存在し、人々に受け入れられてきました。橋本氏が述べているように、指輪は古代から現代まで途切れることなく人間が身に着けてきたもので、そこには個人的、社会的にさまざまな意味が込められています。

さらに、ジュエリーや衣服には様式があり、それを身につける人によって、さまざまなコーディネートが生まれ、装いとして完成します。生活文化に輝きを添える装飾美術は、装飾しようとする人間の欲求と密接につながっているようです。

一点ものなど、多く作られないからこそ価値があがる装飾品。「一人十色」の人とは違うモノを所有することで、満足する消費者。そんな現代、ひとつの切り口として「宝石の色、指輪の歴史」に注目してみるのはいかがでしょうか。


2014ring.jpg

名 称:橋本コレクション 指輪 神々の時代から現代まで ― 時を超える輝き
URL:http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2014ring.html
会 期:2014年7月8日(火)~9月15日(月・祝)
会 場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
開館時間:午前9時30分~午後5時30分(金曜日は午後8時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休 館:月曜日(ただし7月21日、8月11日、9月15日は開館)、7月22日
主 催:国立西洋美術館、東京新聞
後 援:一般社団法人日本ジュエリー協会、公益社団法人日本ジュエリーデザイナー協会
協 力:神戸ファッション美術館、公益財団法人西洋美術振興財団
問い合わせ:ハローダイヤル 03-5777-8600

© Hanae Matsumoto

 
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著者情報

マツモトハナエ

松本英恵

カラーコンサルタント
2005年6月より、All About(オールアバウト)カラーコーディネートガイド
好きな色、似合う色、売れる色、心をつかむ色など、さまざまな観点から、カラーコーディネート、カラーマーケティングのノウハウをお伝えしています。
著書に、『心をつかむ色とデザイン 商品力・サービス力を磨くためのスキルアップ講座』(日本能率協会マネジメントセンター)、『和モヨウ配色手帖 オシャレな“和モヨウ”でもっと磨く配色レッスンBOOK』(技術評論社)などがある。

取材・仕事・講演のご依頼は、公式サイトへお願いいたします。
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松本英恵

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