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034戦後のパリ発!革命的なコレクション「ニュールック」で鮮烈なデビューを飾ったファッションブランド - ディオール社(2)

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1946年、ブランドの始まり

とある実業家をスポンサーに持つ、とあるオートクチュールのデザイナーのメゾンが新しい人材を探していると聞いたディオールは、面接を受けようかどうか、迷いに迷います。しかし、ついに決心し、その実業家の面接を受けることにします。
面接に現れた時の、ディオールの態度は普段とは異なり、非常に自信に満ちたものでした。
しかもディオールが語り始めた内容は、「そのメゾンに入社させてください」ではなく、「私に新しいブランドを作らせてください。私に出資すれば儲かりますよ」という、新たなるビジネスの提案だったのです。今の日本でそんな主張をしたら、最後まで面接官が聞いてくれるかどうかすら不明でしょうね。
ディオールの場合は、出資者本人と面談することが出来ることを前提に、何ヶ月もかけ、プレゼン内容を錬り、マーケティングに基づいた構想を披露できたことが勝因になったようですが。

ところが、この時の発言内容をディオール自身が語った言葉は、少なくとも現代人のわれわれには平凡に聞こえます。

「裕福で目の超えた得意客を、シンプルな印象の影に精巧な職人技をしのばせたドレスで装わせるメゾンを作りたい」

......しかし、この時のディオールは、自分の構想を現実のものとするために、事細かなアイデアを持っていました。それはいかに店作りするべきかについて、服のイメージやアイテムの品揃えはもちろん、内装、家具からスタッフのあり方についてまでのアイデアをすべて細かく、備えていたのです。その具体性を買われ、結局、多額の出資と大きな権限と給与の代わりに、売り上げの3分の1を手に入れられるという特権的な社長の座を手に入れたのでした。

クリエイティブな業界で求められる能力

オートクチュールのメゾンの顧客にあたるのは、当然、お金持ちです。ある種のお金持ちは戦争で没落してしまったでしょうが、戦争で資産が倍増したお金持ちもいるはずです。当時はまだ戦争直後ということで、日々の生活にすら事欠く人々がいる一方、お金があって、戦争が終わって自由になったらお金持ちは、新しいぜいたくを欲しているに決まっています。ビジネスに必要なのは中途半端な道徳心よりも、金が動くためのニーズを読みこむ能力です。それはとくにクリエイティブな業界においていえます。

自身が上流階級出身のディオールは、金持ちのニーズに潜在的に敏感でした。こうして、いまだに「贅沢は敵だ」的な自粛ムードに覆われている戦後の空気の中をはねのけるべく、ディオールは最初の自身のコレクションの中で、「ニュールック」と呼ばれるドレスを創り上げるにいたるのでした。

オートクチュールのデザイナーに就任する経緯自体が業界中で話題を呼んだディオールですが、彼の最初の発表会は2時間に及び、異様な熱気に包まれたものとなりました。

「ファッションが根本から変わってしまう瞬間がある。それは細部の変化ではおさまらない。ファッション全体の傾向が、肉体の全構造を変えてしまう変化だ。今、わたしたちが直面しているのはそういう瞬間なのだ」

これは「ニュールック」のドレスを讃えた、1947年のヴォーグ誌に掲載された文章の一節です。そもそもファッションにあまり詳しくない方にとって「ニュールックとは何?」という疑問もあるでしょうから、筆者の独断と偏見でそれを説明します。

革命的なコレクション「ニュールック」とは何だったのか?

ニュールックとは確かに戦争直後の当時「目新しい服」だったと思います。そもそも前回までお話してきたガブリエル・シャネルの服も、男性の目線に媚びるため、女性のカラダをギュウギュウに縛り付けるコルセットを排除した斬新なものでしたよね。第二次世界大戦前の上流階級の女性に大ブームを巻き起こしたこともありました。

Fotolia_32791421_Subscription_Monthly_M.jpg「ニュールック」によって、当時廃れていたコルセット・スタイルが復活した。

しかし......ディオールのニュールックに欠かせないアイテムが、このコルセットだったのです。しかもモデルの声によると「座ることも、食べることもできない」ほど、厳密に構成された特別なコルセットが必要で、着ることにすら他の人の手を借りなければならないという、ある意味、たいへんに前時代的なドレスです。それがニュールックの本質なのでした。

ディオール社に欠かせない成功要素

その後もディオールのデザインが発表されると、まるで現代の特売品販売会場のように、大金持ちの婦人たちが金切り声をあげ、我先にとドレスを注文する光景が繰り広げられたそうです。オートクチュールは注文服なのだから、現品が無くなることはないのに......と思うでしょうが、社交界の誰それが注文したという記録は残ります。つまり、先に注文しないと、他の人と「被ってしまう」んですね。

こういう時に、カリスマ販売員の巧みな誘導は欠かせないものでした。「こちらのほうが奥様にはお似合いになります」といった手合いの勧誘です。

さらに当時の発表会でも、顧客達の目の前でドレスを着たモデルたちが歩くわけですが、ほっそりしたモデルの体型と注文する奥様の体型の違いを考慮し、なんとか「コレだったら似合うはず」という妥協点を見出すのも、販売員としての腕の見せ所だったようです。お客をその気にさせる販売員の能力に絶対的な敬意を払うディオールは、この手のやりとりには絶対に立ち会わないようにしていたそうです。

価値観を共有しつつも異なる能力をもつ仲間たちによる徹底的な分業制の確立、それがディオール社には欠かせない成功要素だったのですね。


次回は、ニュールックの正体について考察します。

© 堀江宏樹

 
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著者情報

ホリエヒロキ

堀江宏樹

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。

最新刊としては、角川文庫版『乙女の日本史 文学編』が2015年7月25日、幻冬舎新書として『三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町』が9月30日に発売。『乙女の真田丸』が10月中に発売(主婦と生活社)。
好評既刊に『乙女の松下村塾読本 吉田松陰の妹・文と塾生たちの物語』(主婦と生活社)、『女子のためのお江戸案内恋とおしゃれと生き方と』(廣済堂出版)など。監修として参加の、音楽家バトルファンタジー漫画『第九のマギア』(メディアファクトリー)の第一巻も発売中。

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堀江宏樹

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