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035戦後のパリ発!革命的なコレクション「ニュールック」で鮮烈なデビューを飾ったファッションブランド - ディオール社(3)

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ニュールックの「新しさ」と「美しさ」の正体

ディオールの登場以前、フランスの女性服に革命をおこしたシャネルは次のような辛辣な言葉を残しました。

「ディオール? 彼は女性にドレスを着せているのではなくて、(布に)ひだを寄せてるだけよ!」

この言葉でも端的に評言されていますが、「(布の)ひだ」こそが、ニュールックの「新しさ」と「美しさ」の正体ではありました。終戦直後のモノ不足の時代。ただでさえ布がまだ大変に高価だった時代です。それもオートクチュールのドレスに使われる布はさらに高価でした。

戦争中は何処の国でも「贅沢は敵だ」とされますから、この布をひだが出来るまで大量に使う贅沢な服は、戦後になれば求められているのはわかっているけど、人目や道徳を気にしていたら、なんとなく出来ない......というシロモノだったのです。この批判を浴びそうなグレーゾーンに果敢に斬り込んだのが、ディオールのニュールックでした。
要するに、貧しい人は生活そのものに飢えますが、金持ちや女優といった「ものずき」の連中は、「ぜいたくさ」にこそ飢えているわけで、その飢えを満たすためのアイテムを正面切って「新しく」、しかも完璧に創り上げてしまったのがディオールだったのですね。

ディオールの最大の強みとは?

ニュールックのドレスをデザインしているとき、ディオールは創作だけに没頭できていたわけではまったくなく、会社の経営から事務作業から多くの煩雑な用事の中で、それを創り上げたことになります。クリエイターとしても、経営者としても、ディオールの最大の強みは、絶対的にやりたいことが定まっている、ということなのでしょうね。「なんとなく」という曖昧さがない。これが一番の強みだったと思います。

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ディオールのニュールックがもっとも似合うのは?シャネルとのスタイル比較

さて、シャネルとディオールのスタイルを比較すると、興味深いことがわかります。
シャネルがモードの世界にもちこんだのは女性を女性を美しくさせたいという願いだけでなく、女性として美しく装うのに本来、我慢などは要らないという意識でした。これはシャネル以前にはあまり存在しない価値基準だったのですね。
ウェストをコルセットなどでことさらに絞っていないドレスの新美学を筆者なりにまとめると、ウェストがないぶん、胸やお尻が強調されることもなく、「服によってどんなタイプの女性のカラダも美しく魅せられるものにする」という理想が実現できました。

そもそもシャネル自身が19世紀末~20世紀初頭のフランスだけでなく欧米で美人とされた、髪は豊かに長く、身体も豊満で、男性に守ってもらわなければ生きていけないようなかよわい女性像とかけ離れた、小柄で痩せ、しかも気が強いタイプの女性だったことを以前、連載の中でお話しましたよね。

一方、ディオールのニュールックがもっとも似合うのは、ルックス的には、出るところは出て、締まるところは締まった、理想化された身体の女性です。......とはいっても、全ての金持ちの(とくに中年の)女性がそういうボディを持っているわけではない。むしろ、逆でしょうね。
だからこそ、座ったり、食べたりといった日常動作すら満足にできないほどに厳密で特殊な構造のコルセットで身体を補正する必要があったのです。そこまでして創り上げたルックスは、男性から抜群に好評でした。シャネルは女性として女性を喜ばせようとドレスを作り、それで一世風靡しました。一方、ディオールは、女性を愛する男性の目線から、女性を喜ばせるドレスを作ろうとしていたのです。

ファッションというジャンルの本質

ディオールは、ニュールックをはじめとする自分の様々なスタイルを次のような言葉でまとめました。

「わたしは女性を美しくしようとしていると同時に、幸せにもしようとしている。彼女たちはそれを本能的に理解してくれているのだ」

ファッションというジャンルの本質を考えさせられる言葉です。
なぜ(ある種の)ヒトは魅力的な服を着るために必死になるのか。やはりそこにあるのは、愛されたいという想いに他なりません。この一念を満足させられるかどうか、それがファッション産業の宿命のような気が筆者にはするのです。


次回は、最終回。夢を売る企業にまで成長したディオール社のブランド信念について取り上げます。

© 堀江宏樹

 
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著者情報

ホリエヒロキ

堀江宏樹

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。

最新刊としては、角川文庫版『乙女の日本史 文学編』が2015年7月25日、幻冬舎新書として『三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町』が9月30日に発売。『乙女の真田丸』が10月中に発売(主婦と生活社)。
好評既刊に『乙女の松下村塾読本 吉田松陰の妹・文と塾生たちの物語』(主婦と生活社)、『女子のためのお江戸案内恋とおしゃれと生き方と』(廣済堂出版)など。監修として参加の、音楽家バトルファンタジー漫画『第九のマギア』(メディアファクトリー)の第一巻も発売中。

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堀江宏樹

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