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歴史本『乙女の日本史』に見る書籍制作の裏側とヒット戦略

マーケティング

003創作活動のためのマーケティング - 「萌え」は深追いしないほうがいい

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今回は『乙女の日本史』が、どんなマーケティングの結果生まれたのか......についてお話したいと思います。いよいよMAKEPOっぽくなってまいりました(笑)。作家の創作活動とマーケティングとは縁遠いもののように感じるヒトも多いかも知れませんが、文体、内容などについては少なからず、様々なヒトの声を参考にさせてもらいました。

『乙女の日本史』は、平安時代から書き始めました。その上で、滝乃さんの知り合いの歴女もしくは腐女子などに読んでもらい、各ターゲット別にアンケートを取ったのですが......ある方からは反発を喰らいまして、「絶対に買わない! タイトルからは、もっと萌えるエピソード満載の本だと思っていたのに!」と怒られたのを覚えています。「乙女」って現代ではけっこう曖昧な言葉ですからねー。何を期待されているかはホントにターゲットによって違うんだな、と痛感しました。

ちなみに「萌え」という現代語の原型になる古語は平安時代からあります。「らうたし」です。「労たし」と漢字にするとよくわかりますが、一生懸命がんばってる様子に思わずキュンキュンしてしまうよ、みたいな感じですね。現代で女子がしばしば口走る、「かわいい」にも通じるニュアンスがあるかもしれません。

ヒトをキュンキュンさせる「萌え」要素なんですが、『乙女の日本史』ではあえて真正面からは扱いませんでした。なぜかというと「萌える」というのは極私的で......つまり究極に個人的な感覚であって、他人とは分かち合いにくいものだからです。分かち合えたところで、それは同人誌でやるべき内容であって、商業ベースで出すべき本とは違うんだよ、と僕は感じています。


描く人物との距離感はすごく大事

あるヒトの萌え要素は、別の誰かの萌え要素とはまったく異なってるわけです。ですから、僕は『乙女の日本史』の中では、多くの登場人物を突き放してみるというか、クールかつシニカルな目線で扱いました。「この人物はこういうところが、ステキだからみんなも好きになってください!!」というのは押し付けがましいので、避けたのですね。

とくに『乙女の日本史』がヒットした後、我こそが歴史に萌えまくりだという「歴女」のみなさん、もしくはそれを装ったライターさん・作家さんによる類似本がたくさん出されましたし、それなりの成績をあげた作品も多かったとはおもいます。が、「好き嫌いで歴史を語るな!」という、別の歴女さんと思われる読者からの猛烈な反発を喰らったりしてるのを横目で見たりする機会も多く、『乙女の日本史』内での"ターゲット"とのつきあい方は間違っていなかったのでは......と感じています。

既成事実に別の角度から光を当てる。それを「解釈」ともいいますね。ほかに僕がよく用いるのは「現代なら、それはこういうことではないか」という「喩え」です。この手の比喩を上手く駆使できることは、歴史コンテンツを理解しやすくできるか、面白く思わせられるかどうかのカギともいえます。それこそ、歴史的事実に「新しい価値」を生む行為だと思われます。

ただし、よく知られた事実とはいえ、史実ではないケースも歴史上には多々あります。こういう場合は『乙女の日本史』でも扱いに苦労しました。

たとえば上杉謙信や直江兼続が着用した鎧(とされるモノ)が上杉神社には奉納されているけれど、大きさが身長二メートルの男性用である、と。戦国時代には155cmしかなかった男性平均身長を大きく上回りすぎである、と。こういう話を「否定的」に書こうとおもえば幾らでもかけるけど、真実を知ったところで、なにも面白くはないハズです。逆に夢を潰された気持ちになるヒトもいるでしょう。

また、角川での文庫版に書き下ろした黒田官兵衛にまつわるコラム執筆時も痛感していましたが、信長が本能寺で明智光秀に討たれたという事実を知り、嘆き悲しむ秀吉に黒田官兵衛が駈け寄り、「(天下取りの)運が向いてきましたな」などとしれっと言ってのけた......というような有名エピソードも恐らく事実ではない、という切り口で話をしても、読者は退屈なだけだと思うのです。

なぜなら、そういう「語れる」要素があればあるほど、それゆえに、その歴史上の人物人気なのですから。『乙女の日本史』は、歴史学者による入門書ではあってはなりませんでした。また、僕は作家・歴史エッセイストであり、学説を発表すべきなのではありません。だからこそ、その手の真実かどうかは疑わしい通説には、ツッコミを入れて回ることにしました。「鎧、でかすぎです~!」みたいな感じですね。

『乙女の日本史』はあくまで、史実をベースにしたエッセイです。ですが、史実とは異なるであろう事実をアタマから否定するのではなく、それらをある種の「ボケ」と捉えることにしました。「ボケ」といえば「ツッコミ」が必要です。「ツッコミ」することで、「疑わしい通説である」などと無味乾燥な記述になるところを、「笑い」に変えられたのです。

otome_BL.jpg「BL」と言われるジャンルについても、クールな目線で解説

作家・クリエイターに欠かせないのは、「情報収集」

さてコンテンツビジネスのためのマーケティングには、何をコンテンツとするべきかを決めるための「情報収集」は不可欠です。僕のように歴史エッセイスト・作家として、あるいはクリエイターとしてのカンを磨くのに一番必要なのは、知識の量です。クリエイターだけだけでなく、専門職の場合は一般的にそうだと思います。

ただし、それには書物に接して勉強すればよい、というだけではなく、普段の生活の中で養われる部分が大きいと思います。趣味としてではなく、お金を頂いて仕事をこなすことで、確実に、しかも早く成長できるのは事実です。しかし、それだけでは不十分。作家とは、そしてクリエイターとは、オファーが来るのを「待つ」のが一番大事なお仕事だな......と感じることが多いです。

まず生活環境を整えることが重要です。歴史を扱う書物を書いている自分の話ですが、自宅を選ぶ基準は近所に、書店だけでなく大きな図書館があるかどうかです。資料として用いたい書籍がすでに絶版していることは、非常によくある話なのですね。東京23区内に住む意味は僕にとっては大きいのですが、それは都心部に集結している出版社の編集者たちと打ち合わせがしやすいだけでなく、区によって図書館のカラーが違うからなんですね。現時点では何区もの図書館の間を、趣味の自転車で移動し、本棚を見て歩く......ということを習慣にしています。

図書館の資料を使うことの利点は、期限内に必ず読み終え、しかもノートなどを作り上げる必要がある、ということです。無期限の研究では具体的な成果を残しにくいはずです。

こうやって次の原稿やアイデアを出せる知的体力をたくわえるために、気になるテレビ番組は録画したり、仕事とは直接は関係のない本をあえて読んでみたり......その手の活動をすごく大事にしているのです。さて、次回は、作家がどのような経緯を経て本を書き始めるのかという出版業界のお話や、そもそもどうやってヒトは作家になれるのか、というお話をしたいと思います!

『乙女の日本史』絶賛発売中!

  • 著者:堀江宏樹・滝乃みわこ
  • 出版社:KADOKAWA/角川書店

さよなら「おじさん史観」! 今こそ語ろう、乙女目線の日本史。
巷にあふれる「男のための日本史」にツッコミいれつつ乙女目線で日本の歴史を読み直す、日本初「女子のための日本史本」誕生!

© 堀江宏樹

 
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著者情報

ホリエヒロキ

堀江宏樹

歴史エッセイスト・作家。1977年生まれ、大阪府出身。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。大学在学中からフリーランスライターとして文筆活動を開始。『仰天! 歴史のウラ雑学 後宮の世界』(竹書房)で作家デビュー。性別を超えた独特の論調で、幅広いファン層をもつ。

最新刊としては、角川文庫版『乙女の日本史 文学編』が2015年7月25日、幻冬舎新書として『三大遊郭 江戸吉原・京都島原・大坂新町』が9月30日に発売。『乙女の真田丸』が10月中に発売(主婦と生活社)。
好評既刊に『乙女の松下村塾読本 吉田松陰の妹・文と塾生たちの物語』(主婦と生活社)、『女子のためのお江戸案内恋とおしゃれと生き方と』(廣済堂出版)など。監修として参加の、音楽家バトルファンタジー漫画『第九のマギア』(メディアファクトリー)の第一巻も発売中。

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堀江宏樹

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